年齢を重ねるにつれ、歩けなくなる不安、寝たきりになって家族に迷惑をかける不安を抱く人は少なくない。理学療法士の大野優介さんは「何歳になっても筋肉は強くなる」と話す。高崎市栄町でトレーニングジム「スタジオActivo」を開き、著書『健康長寿の人が毎日やっている筋肉にいいこと』も発行した大野さんに、介護にならない体づくりを聞いた。
体を動かしやすくする
―大野さんのジムは少し変わった方針だそうですね。
モットーは「肩こりや腰痛に悩まない体づくり」です。痩せることを目的にするのではなく、体の動かしやすさをよくすること、運動習慣を作ることを大切にしています。マシンピラティスとジャイロトニック®というマシンを使い、基本はマンツーマンでトレーニングしています。
―なぜ、その方針に?
病院の整形外科、リハビリテーション科で働いていたとき、運動習慣のない人が歩けなくなると、リハビリを頑張っても元の生活に戻れないという厳しい現実を見ました。両親が経営する訪問看護ステーションの手伝いもしていたので、その思いはさらに強くなりました。たとえば転倒や骨折で入院しても、もともと体を動かす習慣がある人は、退院後の生活に戻りやすい。そうでない人は自宅に戻るのが難しくなるケースもあります。

フレイルは介護の前段階
―著書ではフレイルの予防について書かれています。フレイルとは何ですか。
加齢や病気によって、体や心のさまざまな機能が徐々に衰え、ストレスに弱くなった状態のことです。介護になる前段階と考えてもらうとわかりやすいと思います。
―フレイル予防は何歳ぐらいから始めるべきですか。
60代から対策した方がいいと思います。いまの人は昔の人よりも活動量が少ないので、本当は若い方も運動習慣を持っていた方がいいですね。
―予防として大切なことは。
筋力を強く発揮する運動と食事が2本柱です。ほかに睡眠を含めた休息、日常生活の中でなるべく活動を増やす習慣も必要です。
―すぐできる運動はありますか。
オススメなのは椅子から立つ、座るを1日10回3セットやってみてください。手っ取り早い足腰の運動です。回数を決めた方が習慣になりやすい。朝食、昼食、夕食のあとにやる、と決めると続けやすくなります。
―歩くこともいいですか。
はい。1日30分以上歩くと病気の予防になると言われています。ある調査では、早歩きを1日20分、週3日やると、脳の海馬が1年で1%大きくなると言われています。放っておくと脳は1年で1、2%萎縮しますから、歩くことは脳にもいい影響があります。
―握力も大事だそうですね。
ペットボトルのふたを誰かに開けてもらうのではなく、自分で頑張って開ける。タオルで雑巾絞りをする。それも握力を使う運動です。手を使うことは脳にもいい影響があります。

食べて動くことが基本
―体と脳は密接に関係している?
そうです。運動をする習慣がないと、力を出そうとする脳の中の神経のつながりが弱くなってしまいます。体を動かすことは、筋肉だけでなく脳への刺激にもなります。
―食事で気を付けることは。
たんぱく質を優先的に取ることです。朝昼晩で一品ずつたんぱく質を入れてほしい。時間がないときは茹で卵でもいいです。高齢の方ほど、たんぱく質とカロリーの高い食事をするべきです。漬物とご飯だけで済ませるより、マクドナルドのハンバーガーを食べるとか(笑)。食べて動くことが健康長寿の基本です。
―正しい食事と運動習慣、身に付けて続けることが重要ですね。
できそうなことをいろいろ試して、1年ぐらいかけて自分流を見つけてほしいです。そして、その後の人生も続けていける形にすることが大切です。無理に頑張るのではなく、自分の生活に合うやり方を探す。何歳になっても筋肉は強くなります。始めるのに遅すぎることはありません。

