朝採れ野菜を盛り込んだ大皿サラダを看板にする農家レストラン「カフェ&マルシェ ノーフ」。運営する柴崎農園は、規格外野菜も捨てずに生かす取り組みと、年間約350人を受け入れる食育活動が評価され、2025年10月、「食品産業もったいない大賞」の最高位となる農林水産大臣賞を受賞した。創業者夫妻の長女で、店を立ち上げた小林郁子さんに開店までの経緯と野菜への思いを聞いた。
「私の仕事を作らなければ」から始まった
柴崎農園は1984年、齋藤昇さん、絹代さん夫妻が創業した。ハウス3棟、計36アールで、ミニトマト、キュウリ、イチゴ、ナス、ケールなど年間約20種類を栽培。長女の小林郁子さんも加わり、生産から加工、販売までを担ってきた。
転機は、弟の州史さんが一緒に農業を始めると決まったことだった。
「弟が農業をやるなら、私は新しいことが何かできるかと思ったんです」
ハウスを増やすことも考えた。しかし、小林さんが選んだのは、野菜を育てる場所を広げるのではなく、食べてもらい、農業に触れてもらう場所をつくることだった。コロナ禍を経て、健康への関心が高まっていたことも背中を押した。2022年10月、かつてハウスが立っていた場所にノーフをオープンした。
実現には法律の改正も大きかった。農地には原則として飲食店を建てられなかったが、2020年の農振法施行規則の改正により、一定の要件を満たす農家レストランを農用地区域内に設置できるようになった。
「ちょうど条件が整ったんです。野菜を食べてもらえて、買い物もできる場所にしようと思いました」


直径30センチの皿に旬を盛る
店のコンセプトは、「メインディッシュはサラダ」。周囲の人に「農家レストランと聞いて何を思い浮かべるか」と尋ねたところ、8割以上がサラダと答えた。
「それなら、皆さんが期待するものに、きちんと応えようと思いました」
ランチは、ごはんランチと夏季限定のカレーランチの2種類。どちらにも、直径30センチの大皿いっぱいに盛られたサラダが付く。
「旬の野菜を、あるものから軒並み入れています」
開店した年に、規格外の玉ネギや、割れてしまったミニトマトを使い、2種類のドレッシングも開発した。野菜を引き立てるため、味付けはあくまで控えめだ。
平日は女性客が約9割を占め、土日祝日には家族連れや、孫を連れた高齢者も訪れる。介護食士の資格を持つ小林さんは、硬い食材や揚げ物を避け、柔らかさや食べやすさにも心を配る。


捨てない農業を次の世代へ
2025年10月、柴崎農園は第13回「食品産業もったいない大賞」で、最高位となる農林水産大臣賞を受賞した。評価されたのは、形が悪い、割れているといった理由で出荷できない野菜も、加工品や料理として生かし、栽培したものをできる限り捨てない取り組みだ。
同時に、長年続けてきた食育活動も高く評価された。地域の小中学生の職場体験や、インターンシップ実習などを年間約350人受け入れ、農業の現場を伝えている。農業の仕事は、種をまき、収穫するだけではない。草むしりや選別、スーパーへの配達、加工品へのシール貼りまで、数多くの作業がある。規格外の野菜がなぜ生まれ、どうすれば無駄なく使えるかも、実際の仕事を通して知ってもらう。
親子で農業体験に訪れる人もいる。かつて、野菜嫌いだった子どもが、自分で収穫したキュウリを口にしたことがあった。食べる姿を見て、母親は涙を流したという。
「玉ネギが土の中にできることも、ナスの木がこんなに大きくなることも、知らない子はたくさんいます。実際に見て、触って、知ってもらえれば」
小林さんが何より伝えたいのは、採れたての野菜のおいしさだ。仕事や子育てに忙しい人たちへ、すぐに食べられる野菜料理を届ける試みにも力を入れる。育てたものを余さず使い、その味を最も良い形で伝える。畑と食卓をつなぐノーフの挑戦は、これからも続く。


カフェ&マルシェ ノーフ
高崎市柴崎町1642の2
TEL/027・335・8207
営業時間/11時~17時(ランチは14時まで)
店休日/日・祝日
