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前橋・赤城南麓を探訪
輪郭を失った五代大日塚(ごだいだいにちづか)古墳
前回は上武国道の上武上泉交差点に位置し、ひときわ目を引く新田塚古墳を紹介した。そこから車で約7分ほど西へ移動すると、前橋市五代町の西南端に五代大日塚古墳が所在する。赤城山を背景に耕作地が広がるのどかな場所にあり、近くにこれといった目印があるわけではないが、生い茂る背の高い樹木に守られているかのように、ポツンと佇んでいるから比較的見つけやすいだろう。
とはいえこの古墳、墳丘がかなり削り取られていて原形がよくわからない。北側は墳丘が残り、南東方向には石室の石材らしき巨石がごろごろと転がっている。西側の小道に向かって立っている説明板の内容によると、五代大日塚古墳は平成17年に前橋市の史跡に指定されている。昭和10年に行われた古墳の一斉調査では円墳という見解だったが、現在残されている墳丘の盛土や石室の一部から考えるとそうではないようだ。横穴式石室を持つ前方後円墳であると推定され、およそ墳長20メートル、後円部径13メートル、高さ3メートル、前方部径9メートル、高さ2・1メートルの規模と見られている。
明治38年に当時の土地所有者らによって発掘され、主に渦文鏡、金環、大刀、馬具などが出土している。これらの出土品から後期古墳としての時期が推定され、6世紀末から7世紀前半に造られたと考えられている。
このように原形を留めていない古墳は、ややもすると残念な存在に思われがちだが、この地に古墳があることを示している。五代大日塚古墳の露出した石材の羅列は、石室の形に並んでいるようにも見え、残された墳丘とあいまって想像力をかき立てられる魅力的な古墳といえるだろう。
◎所在地 前橋市五代町214
◎取材協力 前橋市教育委員会