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旧群馬町エリアを巡る 石室が希少 お春名古墳

前回訪問した金古町の庚申古墳群(B号墳・G号墳)から南西方向に車で2分、徒歩なら7分ほどの距離に、比較的保存状態のいい古墳が存在する。県道6号線(前橋箕郷線)のすぐ北側に位置し、道路の反対側にあるコンビニが目印になる。近づくと、いかにも円墳らしいこんもりとしたきれいな形をしている。墳丘の近くには説明板が立っている。お春名古墳と呼ばれるこの円墳は、市の指定史跡である。説明板によると、墳丘は地山を緩く削り出した基壇の上に土を盛った円墳で、直径15メートル、高さ3メートルの規模。斜面には葺石が施され、墳頂部には円筒埴輪が並べられていたようだ。周堀も確認されている。
南西に開口する埋葬施設は自然石乱石積みで無袖型の横穴式石室。特筆すべきは、石室の左壁に小型石室が直角に取り付いた特殊な「ト」字型の構造をしている点だ。全国的にも珍しく、県内の例では他に沼田市の奈良古墳群に1基あるのみ。本紙の過去の記事の中でも「ト」字型の石室を紹介したことがある。
残念ながら、お春名古墳の石室は埋め戻されているようで、内部の様子を見ることはできない。墳丘や石室内からは円筒埴輪のほか、鉄刀、鉄鏃、耳環、勾玉、馬具、土師器、須恵器等、多数出土している。これらの遺物などから、お春名古墳は6世紀前半から中頃に造られ、7世紀まで追葬が数回行われていたと考えられている。また説明板によれば、6世紀前半に起きた榛名山大噴火の後、初めてその被災地に造られた本格的な横穴式石室墳であることから、この地域一体の災害、復興にあたった集団の長が埋葬されたであろうと推定している。
◎所在地 高崎市足門町1367
◎取材協力 高崎市教育委員会 事務局 文化財保護課