猫カフェ「バーニャ」でゆったり秋の日を
お茶を飲みながら、猫と遊んだり触れ合ったりできる猫カフェ。国道17号沿いにある「ととのう猫カフェ バーニャ」は、高崎市で唯一の保護譲渡型猫カフェだ。オープンから1年。猫カフェの楽しさを体験しながら、取り組みと展望について尋ねた。
サウナ風の室内で猫に癒される
お気に入りのドリンクを片手にそっとドアを開ける。20畳ほどの室内には階段式のベンチがあり、その上には小さなマット。ととのい椅子や、水風呂を模したスペースもあってサウナのよう。バーニャとは、ロシア語でサウナの意味。オーナーの黒澤ミノルさんの「リラックスしてほしい」との思いを、サウナをモチーフにしたスタイルで表した。
室内の思い思いの場所でくつろぐ猫たち。早速、足元に集まってくる好奇心旺盛な子もいれば、キャットタワーの上からその様子を眺める子、お客さまの隣に寝そべってなでられている子などさまざまだ。
訪れる人は、中学生から80代までと幅広い。純粋に猫が好きな人や住宅事情で飼えないが猫と触れ合いたい人、「猫を飼う前に接し方を学んで」と愛護団体から勧められてやってくるファミリーや愛猫を失った、いわゆる猫ロスの人もいる。猫をあやしたり、スマホを向けて写真や動画を撮影したり、本を読んだりしながら思い思いの時間を過ごす。秋の日、ゆったりと心を癒すのにぴったりだ。
県外ファンも惹きつける深い愛情
在籍する猫たちは、総勢11匹。看板ニャンズ7匹と譲渡対象のバーニャンズと呼ばれる4匹からなる。驚くのは、どの子も毛並みが良いこと。なでるとツヤツヤ、ツルツルでいつまででも触れていたくなる。それぞれの猫に合ったフードをチョイスするという、スタッフの愛情の表れだ。
この深い愛情こそが、ファンの心をつかんではなさない鍵。猫へ声掛けや接し方からも、猫に対する思いがひしひしと感じられる。その様子を見ているだけでも自然と笑みがもれて心がふっくら。県外からのリピーターも多いというのも頷ける。
今年4月から譲渡がスタート。3匹が卒業した。「バーニャにいるよりも幸せになることを一番に考えている」と黒澤さん。譲渡に至るまでエントリーシートの提出、面談、家庭訪問、トライアルなどいくつものプロセスを踏むのもそのためだ。 卒業の日には、開店前からファンが列をなし、笑顔の花道をつくる。スタッフと顧客が両輪となって、猫たちの幸せを支えている。
人と猫に優しい世界を
小さいころから猫を飼っていた黒澤さんが「猫のためになることを」と保護猫を迎えるスタイルとしたが、それが悩みになることもある。「飼えなくなった」「近くの野良猫を保護して」という連絡が後を絶たない。同店では保護できる頭数や猫同士の相性などがあり、すべての要望に応えるのは不可能。「幸せな猫が増える一助になれば」と最近ではスタッフのアドバイスで、相談者自身が譲渡先を見つけることが増えてきた。
資金の問題もある。主な資金源は入場料。寄付やグッズ販売の売上もあるが、経営は楽ではない。「保護猫というと無償のボランティアに頼りがちだが、人も猫も生きていくためにはお金が必要。ビジネスとして成り立つモデルになれば」と黒澤さんは前を向く。
現在、飼い主に何かあってもペットを託せる「猫信託」に向けて準備が進む。このシステムが動き出せば、安心する飼い主と生涯の幸せを約束された猫は確実に増える。「猫に関することならバーニャ、と言われる存在になりたい」と黒澤さん。小さなものに対する優しい取り組みは、人の世界も心地よいものにしていくはずだ。
高崎市上並榎町595の12オオサキビル1F
TEL 027-329-6888
【営】 11時〜20時(最終入場19時)
【休】 第2木曜、年末年始 猫の体調により臨時休業有
【料】 平日30分 1390円(税別)~ フリードリンク付
http://nekosauna.com/