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早春を愛でる「ちごもち」
高崎の年の瀬をやさしく彩る甘い便り、それが微笑庵の「ちごもち」である。群馬県内の信頼するのイチゴ農家と提携し、早朝に3Lサイズの「やよいひめ」を届けてもらう。群馬生まれのブランドイチゴは果汁が豊かで甘く、断面まで赤い。その完熟果実を練乳入り白あんで包み、さらに薄い餅で繊細にくるむ。
ひと口かじれば果汁があふれ、白あんと餅が溶け合い、口の中で春が広がる。世に出回るイチゴ大福とはまったくの別物。初めて食べたときの衝撃はいまも忘れられない。素材を生かすとは何か、その答えをこの一粒が教えてくれる。
店主は3代目・宮澤啓さん。昭和5(1930)年に祖父が創業した「宮沢製菓」が原点だ。大学卒業後、千葉県の和菓子店「京山」で師匠・佐々木勝氏のもとで修業し、黙々と和菓子をつくるその背中から多くを吸収した。
機械化が進む時代に逆らい、火加減、湿度、素材の声に耳を澄ませる。餅のやわらかさも、あんの練り具合も、その日の気温と空気で変わる。宮澤さんは毎朝、生地の感触で水分を確かめ、最適な仕上がりを探る。
もう一つの看板「どらやき」も評判だ。ふっくら焼いた生地に、北海道産小豆を炊いた粒あんが香る。朝4時から仕込み、9時の開店には焼き立てが並ぶ。甘さの奥に、静かな気迫がある。 祖父の代から続く店の礎に、師から受け継いだ精度と誠実さを重ね、独自の味の世界を繰り出す。


微笑庵(みしょうあん)
住所/高崎市剣崎町1064の2
電話/027・343・3026
営業/9時~15時
休日/水曜

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