映画『ブルーボーイ事件』 高崎ロケで昭和の空気を再現 12.5(金)高崎公開 2025年11月07日号

旧高崎スズランの通りで撮影
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1960年代の日本で実際に起きた「ブルーボーイ事件」をもとに、性別適合手術の是非をめぐる裁判と、それに関わった人々を描いた社会派ドラマ『ブルーボーイ事件』。群馬県出身の飯塚花笑監督がメガホンを取り、昭和の街並みを再現した高崎ロケの舞台裏を、シネマテークたかさき支配人の小林栄子さんと語った。

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銀座の街を旧高崎スズラン前で

小林 映画を見て、まず驚いたのは冒頭のシーン。旧高崎スズラン前がまるで銀座の街並みに変わっていました。

飯塚 ロケは2024年5月。高崎スズランは解体工事の最中でした。撮影できるのは最後のチャンス。美術チームが電話ボックスやポスト、地下鉄の入口まで作り込み、現代的な要素はCGで消して、あの印象的な摘発シーンが生まれたんです。

小林 大がかりな撮影でした。

飯塚 はい。大通りと路地を全面封鎖し、桐生市のクラシックカー愛好家の皆さんに協力いただいて60年代の車を配置してもらいました。昭和を象徴するミゼットが走り抜けたり。朝から撮影準備を始め、夜中まで撮影しました。

小林 すごい。ロケは高崎、前橋、伊勢崎を中心にオール群馬で行われたとか。

飯塚 全国をロケハンしましたが、どこも現代の要素が混じってしまう。最終的に群馬の街にこそ、1960年代の空気が残っていると気づきました。

緑のドレスは高崎出身の村山朋果さん

「きゃらばん」に漂う昭和の時間 

小林 主人公のサチが働いていた喫茶店は、昭和町の「きゃらばん」ですね。

飯塚 ロケハンでは10軒近くの喫茶店を回りました。「きゃらばん」は時代の香りがあり、芝居を組み立てやすい空間でした。マスターがロケハン中に何杯もコーヒーを淹れてくださったのは忘れられません。

小林 高崎で学生時代を過ごした人には、ちょっと背伸びして行く“特別な店”ですよね。そこが映画の舞台になるのは感慨深いです。

飯塚 柳川町の路地でも撮影しました。高崎市出身の俳優、村山朋果さんが娼婦役を演じ、警官に追われる場面です。映画の導入部分を支えてくれました。

小林 法廷劇のシーンは圧巻でした。言葉だけになりがちな場面を、照明やカット割りで見せていましたね。

飯塚 傍聴席を暗くして証人に光を当てる演出は、撮影監督の芦沢明子さんの提案です。日本を代表する女性カメラマンで、スズラン前のロケも「ここがいい」と言い出したのも芦沢さんでした。

サチが働く喫茶店は「きゃらばん」

シネマテークでのバイト経験

小林 そういえば花笑さんは大学卒業後、1年間シネマテークたかさきでアルバイトしてたんですよね。

飯塚 映画の「出口」、つまり観客に届く場所を経験したくて。フィルム映写機の最後の時代で、映写技師の方に一から教えてもらったのも貴重な経験でした。

小林 「ここで舞台挨拶できるような監督になって戻ってきます」って言って東京へ旅立っていった。その若者が、こんな大作を撮る監督になったとは。

飯塚 照れますね(笑)。12月6日、シネマテークで「ブルーボーイ事件」の舞台挨拶させていただきます。ぜひ一人でも多くの方にご覧いただければと思います。

飯塚花笑監督(写真左)と小林栄子支配人

飯塚花笑(いいづか・かしょう) プロフィール
1990年、群馬県生まれ。高崎経済大学附属高―東北芸術工科大卒。トランスジェンダーである自身の経験をもとに制作した『僕らの未来』や『世界は僕らに気づかない』で、高い評価を受ける。

映画 『ブルーボーイ事件』
1965年の東京。警察は売春取締りを強化するが、性別適合手術を受け女性として働く「ブルーボーイ」は法の対象外。警察は手術を施した赤城医師を優生保護法違反で逮捕。喫茶店で働くサチは恋人にプロポーズされ幸福の中、赤城の弁護士から過去の手術を理由に証言を求められる。実在の事件をもとに、時代の偏見と人間の尊厳を問う法廷ドラマ。

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