すごいゾ!古墳 第79回 上小塙稲荷山古墳

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北北西に開口する横穴式石室 謎の多い上小塙稲荷山古墳

上小塙稲荷山古墳

 高崎市内にはまだまだ面白い古墳がいくつも存在する。高崎環状線を上小塙町方面へ向かうと、北側に大きな赤い鳥居が見えてくる。その鳥居をくぐり、田んぼのあぜ道を真っすぐ300メートルほど北へ進む。すると小高い森が姿を現す。この森の正体は、古墳の上に社殿が鎮座している烏子稲荷神社。その土台が直径約50メートル、高さ約9メートルの大きな円墳で上小塙稲荷山古墳と呼ばれている。

 南側は境内から社殿へ続く石段が備わり、墳丘はかなり改変されている。階段を上らず西側から社殿の裏手に回ると、意外にも北北西方向に石室が開口している。付近に立つ説明板によると、上小塙稲荷山古墳は市の指定史跡。二段築成の上段部に横穴式石室が築かれたとある。石室の構造や出土した須恵器などから6世紀前半の築造と推定される。

 開口部は普段、鍵の付いた格子戸越しに中をのぞくことしかできないが、今回特別に許可をいただき石室内へ入ることができた。足元にゴロゴロと石が転がる羨道から玄室へ。奥へ進み空間が広くなるとともに、積まれている石も大きくなっていく。使用している石は自然石の輝石安山岩だ。暗い石室から外へ出ると、榛名山がよく見えた。

 それにしても不思議な点が多い。本来であれば石室は南側に開くのが通例。しかも通常よりもかなり高い位置に造られている。墳丘南側の状況によっては前方後円墳、あるいは帆立貝式の可能性も残され、竪穴式の埋葬施設を持つ大型古墳を後世に再利用している可能性も捨てきれないという。この古墳のある上小塙は、かつて2度の榛名山の噴火の影響を受けた地域。石室が榛名山の方向を向いているのにも訳があるのかもしれない。なんともミステリアスな古墳である。

◎所在地
 高崎市上小塙町564の1
◎取材協力
 高崎市教育委員会 事務局 文化財保護課

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