目次
盗掘を受けず副葬品が出土
前橋市田口町 塩原塚古墳盗掘を受けず副葬品が出土
前回は丘陵の上に築造された前橋市富士見町の九十九山古墳を紹介した。そこから車の移動で6分ほど、国道291号線の田口町の交差点を北上してコンビニの先の路地を右に折れたところに塩原塚古墳はある。背の高い樹木が生い茂っているから見つけやすい。ただし注意すべき点がある。車を停めるスペースは一応あるのだが、塩原塚古墳は民家と地続きの場所に所在している。そのため訪問する際は、くれぐれも良識の範囲内での見学をお願いしたい。
道路に面した古墳の片隅に標柱と説明版が立っている。そして南西に回り込むと石室が開口している。調査によれば、墳丘は高さ3メートル、直径14メートルの円墳。周囲は1・3メートルの高さまで河原石で葺かれていた。頂上は平坦で埴輪は見つかっていない。埋葬施設は両袖型の横穴式石室で、榛名山噴出の角閃石安山岩を加工して積んでいる。現在は側壁の崩落が著しいことから、土のうを埋めて保存しているそうだ。出土品は複数の人骨や歯のほかに、直刀2本、耳環、馬具類など数多くの副葬品が発見された。築造時期は6世紀末から7世紀初頭と推定されている。
実のところ塩原塚古墳の存在は、昭和10年に行われた古墳の県下一斉調査の際にはもれていたという。ただの名もない小さな古墳であったが、昭和29年に行われた発掘調査によってほぼ完全な状態の石室が発見され、前述したように多数の副葬品が出土した。これをきっかけに土地所有者の名前をとって塩原塚古墳と名付けられた。昭和58年には前橋市の史跡に指定されている。小さいながらも盗掘を受けなかったのは、民家の敷地内で守られていたからに違いない。
◎所在地
前橋市田口町千手堂582の7
◎取材協力
前橋市教育委員会