今年、高崎警察署管内で起こった詐欺被害の件数は14件(9月17日現在)。6カ月で19件だった前年度と比べると発生件数は減っている。しかし、驚くのは被害総額だ。1件当たりの被害額は極端に増えており、今年は総額1億6000万円超。昨年の2・5倍近くにまで膨れ上がっている。最近の詐欺の特徴、手口、注意点などについて、高崎警察署生活安全課の桐生悠介さんに聞いた。
増えるSNS型。4千万の被害も
このところ、連日のように報道される詐欺被害。「昨年と今年では、明らかに手口が変わっています」と桐生さんは話す。急激に増えているのがSNS型詐欺。SNS上の偽の広告などをきっかけに投資という名目で金をだまし取る投資型と、交流サイトやマッチングアプリなどで知り合った相手に恋愛感情を抱かせ、好意を利用して金をだましとるロマンス型がある。SNS型の特徴は、1件当たりの被害額が大きいこと。中には4千万円を超えるケースもあったと言う。
全財産を失いかねない投資型
投資型でよくあるのは、検索ワードに連動して表示される広告やアフィリエイト投稿をクリックした先で投資を勧められるケース。勉強会グループに誘い、メンバーの儲け話に触発させることもある。指南者に任せれば間違いないと、指定口座に資金を振り込ませ、偽のアプリをダウンロード。アクセスすると現在の運用状況が把握できる仕組みだ。本物のチャートのように数字が絶え間なく動き続けており、日を追うごとに利益が増えていくように見える。もちろん、これも偽情報。利益が増えるとさらに被害者は投資額を増やし続け、その結果、振込金額は数千万円に膨れ上がることも。引き出す際に利益の何割かにあたる手数料を要求されるが、投資額が大きいため手数料だけで数百万円に及ぶ。手数料が払えない、と警察を訪れ、発覚することが多い。
心のすき間に入り込むロマンス型
ロマンス型は、SNS上で結婚を匂わせ「一緒に暮らすための資金」や「将来のための投資」を持ち掛けられる。暗号資産の購入や架空の投資を勧められることが多い。インターネットバンキングを開設させ、共同資産として振り込ませることもあるという。いつの間にか全額引き出されていて、急に相手と連絡がつかなくなり警察に駆け込む。「接触はSNS上だけというケースが圧倒的に多いが、中には実際に本人に会う稀なパターンもある」と言う。被害にあうのは男性が多く、年代は30〜70代と幅広い。
冷静に、調べて、相談を
SNS型詐欺は、信頼関係を築きあげてから、投資の勧誘や金銭の要求をするのが共通の手口。信じる心を利用するあくどいものだ。信じ切っているため、警察が「明らかに詐欺」と指摘しても頑なに否定する人も少なくないと言う。
「投資なら人任せにせず、自分でよく勉強を。最初は信頼できる金融機関で、顔の見える取引から始めては?」と桐生さんはアドバイスする。ロマンス型では、やりとりの文章を見ると明らかにAIによるものもある。本人だと送ってくる顔写真が別人であることがほとんどだ。「行動を起こす前に自分で調べたり、周りに相談したり。一度立ち止まって冷静になってほしい」と呼び掛ける。
防犯対策電話録音機を無料貸出中
件数は減っているものの、依然としてオレオレ詐欺やキャッシュカード詐欺盗もはびこっている。ファーストステップの多くは自宅の固定電話。おすすめは、防犯機能付き電話機に代えることだ。着信時に警告メッセージが自動で流れ、通話内容が録音される機能が付いているため、詐欺の標的になりにくい。高崎警察署では現在の電話に取り付け可能な「防犯対策電話録音機」を無料で貸出中。期間は1年間。まずは利用して、使い勝手を確かめてみるといい。
「上州くん安全・安心メール」を活用
群馬県警察では、群馬県内の防犯情報や交通安全情報などを「上州くん安全・安心メール」で配信中。登録すると、携帯電話やスマートフォンに情報が届く。もちろん、詐欺の情報も含まれている。登録料は無料。情報を共有して、ネットワークの力で自分や周りの人を詐欺の被害から守り、安心の毎日を過ごそう。
■取材協力
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