日本人の心と祈りを未来へ―― 創建850年・山名八幡宮が紡ぐ “ヒトとしての本質” vol.2

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合理性やスピードが重視される現代。私たちはヒトとして大事な何かを失っていないだろうか?
古い時代が終わり新しい時代が明けていく中、生活は変化し、価値観までも変わっていく。
最も深い祈りであるはずの「死」においても、弔いや見送りは省略され、手を合わせる場さえないケースも増えてきている。
このことに大きな懸念を感じ、神社が一歩踏み出した。
前号に続き、創建850年を迎えた山名八幡宮宮司、高井俊一郎さんに話を聞いた。

―どのような懸念を抱えているのですか?

 私たちの最も深い祈りは身近な人の「死」ではないでしょうか。昨今弔い方も多様化しており、ご遺体を火葬するだけのケースも増えてきています。
 「死を見送る」ことは、縄文時代には既に埋葬が見られるように葬送の儀式は、故人を悼み弔うと共に、社会的な役割も担ってきました。また動物においても、象は死骸を埋めたり、鳥は番が亡くなると、もう一方も後を追うなど、仲間や家族の死を認識し、悼む本能があるそうです。その生物の営みを、ヒトは自ら手放そうとしているのではないでしょうか。

―今、求められる神社の役割とは?

 日常から宗教や伝統的風習がなくなっていく反面で、自然とのふれあいやヨガやサウナ、寺社への参詣などで心を保ち整える、SBNR―Spiritual But Not Religious(宗教的ではないがスピリチュアル)と呼ばれる人たちが増えてきています。
 それは、自然や祖先など目に見えないモノとの繋がりを大切にしたいという心の顕れです。
 私たちは、御霊(魂)に手を合わせることで、先祖や歴史とのつながりを感じることができ、心の内省を促し、感謝の気持ちを育て、精神的な充足を齎すことができます。この心を後世に繋いでいくことも、神社やお寺の大切な役割だと思います。

―山名八幡宮が始める神葬祭とは?

 何事も、本質を守ることがとても大切で、且つ時代の流れで形式にとらわれない自由さも大事だと考えます。「身体は自然に還り、魂は大切な人々を見守る」これが神道の弔い方の本質です。手を合わせる場所と文化は残さなくてはならない。しかし、お墓(奥津城)を残したくない人も増えています。
 そこで当社では、御霊は境内の祖霊社に祀り日々祭祀を行い、身体(ご遺骨)は奥津城(墓)だけではなく、山や海など自然への還り方を自由に選べるように工夫しました。

■山へ還る
山名八幡宮が鎮座する八幡山の奥には世界遺産にも登録されている、現存する日本最古の石碑「山上碑」があります。山へ還るための祭祀として、関東平野を北端から眺める祖霊社に御霊を移し、「山上碑」の麓の合葬墓へ納骨いたします。

■海へ還る
古くから海洋散骨の文化が残る関門海峡・壇ノ浦。盛者必衰の理をあらわす、平家が滅んだ地として有名です。海へ還るための祭祀としては、当地の和布刈神社(めかり神社)に依頼して、海洋散骨を執り行います。
※海洋散骨は厚生労働省より発布されている「散骨に関するガイドライン」に則り実施しております。

 「亡くなる者は残される人を守り、残される人は亡き者に心静かに手を合わせる」これは感謝と祈りの根源で、感性に基づく日本人の心です。この心を残していきたいと思います。

―今後の展開は?

 目まぐるしく変化する現代において、私たちは知らず知らずのうちに「心の置き場」を見失いがちです。そんな中で山名八幡宮は、「私たちは自然と歴史の一部である」という理から、人々がふと立ち止まり、自分の内なる声と静かに向き合える神域を創ろうとしています。また、一人では乗り越えられない困難も、誰かとつながることで前を向くことができます。人々が繋がり支え合う空間を丁寧に育てていきます。
 「心の拠り所」として神社の新たな役割を、ここから静かに広げていきます。

神葬祭に興味をお持ちの方はお気軽に問い合わせください

山名八幡宮
高崎市山名町1510−1
027-346-1736
https://yamana8.net/

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