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三代で完成させた秘伝のタレ

シャーという音と共に鍋の油に衣の花が散った。徐々に黄金色に変わり、まん丸なかき揚げができ上がる。手早く秘伝のタレに浸し、丼のあつあつご飯の上に乗せる。
「どうぞ、かき揚げ天丼です」、店主の吉村晴造さんの明るい声が響く。具は三つ葉と小海老だけと潔い。さっそくいただこう。
芳ばしい胡麻油の香りが鼻をくすぐる。サクサクのかき揚げ天とご飯を一体化させるタレは甘めだが、しつこくなく切れがいい。「そば屋だった祖父と天婦羅屋の父、そして僕で作り上げた自慢のタレです」。うなぎ屋のタレのように継ぎ足し継ぎ足し使っている。
時間と共に、かき揚げがしっとりしてくるのも、また良い。箸休めにいただくぬか漬け、赤だし味噌汁。すべてがカンペキ。
昭和33(1958)年、東京・八重洲に生まれた小さな天婦羅店。それが芳村の前身だ。
「祖父と父で切り盛りしていました。母の実家のある群馬に移転したのは平成4(1992)年のこと」。高崎に来て30年以上が経過した。
天婦羅の命ともいえる油はかどやの最上級ごま油を基本に、菜種油と大豆油を加える。「芳村の天婦羅は胃もたれしない」と常連客は口を揃える。その秘密は「最初から鍋に油を入れ過ぎない。減ってきたら新しい油を足す。だから常に新鮮なんです」。
海老やキス、イカ、野菜類を盛り合わせた上天丼も人気。一つの丼の中で職人の技を存分に味わえる。


天婦羅 芳村
住所/高崎市飯塚町1543の14
電話/027・364・4656
営業/11時30分~14時(L・O 13時20分)
18時30分~21時(L・O 20時)
休日/日・月・木曜